
夜間の歯ぎしりや日中の無意識な食いしばりは、歯の損傷だけでなく、顎の痛みや頭痛などさまざまな症状を引き起こす可能性があります。そのため、早期発見と適切な治療を受けることが大切です。この記事では、歯ぎしり・食いしばりの基礎知識や治療法について詳しく解説します。
歯ぎしり・食いしばりとは
歯ぎしり(ブラキシズム)は、主に睡眠中に無意識下で歯のこすり合わせることです。一方、食いしばり(クレンチング)は、日中に意識せず歯を強く噛みしめる状態のことを指します。どちらも過度なストレスや生活習慣の乱れが原因となることが多く、放置すると歯の損傷だけでなく、顎関節症や頭痛などを引き起こす可能性があります。
治療方法について

マウスピース治療
マウスピース治療は、歯ぎしりや食いしばりの最も一般的な治療法です。就寝時や日中に装着することで、歯への負担を軽減します。マウスピースは個人の歯型に合わせて作られるため、装着感も快適です。上下の歯の間に適度な空間を作ることで、歯ぎしりの力を分散させ、顎の筋肉の緊張も和らげます。また、歯ぎしりや食いしばりの自覚を促し、習慣の改善にも役立ちます。
ボツリヌス治療
咬筋(顎の筋肉)にごく少量のボツリヌストキシンを注入することで、過度な筋肉の緊張を緩和する治療法です。食いしばりの力を弱め、顎の疲労や痛みを軽減する即効性の高い治療になります。効果は3〜6ヶ月程度持続し、その後、徐々に元の状態に戻るため、継続的な治療が必要です。
歯ぎしり・食いしばりの治療はこんな方におすすめ
朝起きた時に顎が疲れている、痛みがある方、歯の表面が削れているという方は、夜間に歯ぎしりや食いしばりが起こっている可能性があります。また、日中に頭痛や肩こりがある方、パソコン作業中に歯に力が入っていることに気づく方は、食いしばりの習慣があるかもしれません。
とくに、最近ストレスを感じやすい方や歯の詰め物が頻繁に取れる方、顎関節の違和感を覚える方は、一度受診をおすすめします。
歯ぎしり・食いしばりの治療のメリット
-
Merit01
歯の保護
マウスピースの使用で、歯の過度な摩耗や欠け、ひび割れを防ぐことができます。また、詰め物や被せ物の破損や外れるのを防ぎ、治療物の寿命を延ばすことができます。歯の表面のエナメル質の摩耗を防ぐことで、知覚過敏の予防にもなります。
-
Merit02
症状の緩和
顎の疲労や痛み、頭痛などの不快な症状が改善します。特に朝起きた時の顎の違和感や、こめかみの痛みが軽減されます。また、首や肩のこりの改善や睡眠の質の向上が期待できます。
ボツリヌス治療の場合は、顎の筋肉の緊張が直接的に緩和され、即効性の高い症状改善が期待できるでしょう。
-
Merit03
予防効果
将来的な歯や顎の問題を予防できます。先述したとおり、歯ぎしりや食いしばりは顎関節症や頭痛の原因となる可能性があります。そのため、歯ぎしりや食いしばりを改善することで、将来的な発症を防ぐことが可能です。
また、自身の症状に対する意識が高まることで、ストレス管理や生活習慣の改善にもつながります。日中の姿勢や食習慣の見直しなど、健康管理を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
歯ぎしり・食いしばりの治療のデメリット
-
Demerit01
継続的な管理が必要
マウスピースの定期的な調整や交換が必要です。また、生活習慣の改善も含めた長期的な取り組みが求められます。ボツリヌス治療の場合も効果の持続期間が限られるため、定期的な治療が必要となります。
-
Demerit02
マウスピース装着の煩わしさ
マウスピースの装着に慣れるまでは、会話や飲み物を飲むことに不便を感じることがあります。また、毎日の装着と洗浄、保管など、日常的な管理も必要となります。とくに就寝時の装着は習慣化するまで面倒に感じることもあります。
歯ぎしり・食いしばりの治療の流れ
-
Step.01
カウンセリング・検査
歯の摩耗状態や顎の状態を詳しく検査します。とくに、歯の表面の欠け・摩耗の程度や、顎関節の動きをチェックします。また、生活習慣やストレス要因についても尋ね、原因の特定に努めます。虫歯や歯周病が見つかった場合は、優先して治療を行います。
-
Step.02
治療計画
検査結果をもとに、マウスピースの必要性や種類、その他の治療法を検討します。症状の程度や生活スタイルに合わせて、ハードタイプやソフトタイプなど、最適なマウスピースを選択します。
-
Step.03
マウスピースの製作・調整
歯型を取り、個人に合わせたマウスピースを製作します。完成後は装着感や違和感をチェックし、必要に応じて微調整を行います。マウスピースの正しい装着方法や取り扱い方についても説明します。